[ファンコンテンツ] ウィザーズ社の知的財産権について
全世界2,000万人のMTGファンの皆さま、こんばんは。
今回の記事は「ファンコンテンツ」について、と言うMTG本筋とは関係ないお話です。
私はこの度、一人回しシミュレータと言うWEBアプリを作成し、それの公開にあたりウィザーズ社とやり取りをしました。
最終的に本社(アメリカ)にもコンタクトを取り本件に対する返信も頂き色々と納得したので、今後ファンコンテンツを作る方が迷った時の道しるべになるように、記録としてドキュメンタリー形式でここに残す事にしました。
大多数の方が、普段は掘り下げないであろう部分のお話なので割と面白いかも知れません。
はじめに
本記事を読むにおいて、念頭において欲しい事は
- ウィザーズ社に対する見解は完全に私的な解釈(=私はこう感じた)であり、公式な見解では無いと言う事。
- 文中に引用するメール文章の全てが原文では無いと言う事。
この2点は必ず理解しておいてください!
ああ、こいつ(=うり)はそう感じたんだなって思ってくれたらOKです。
ファンコンテンツ・ポリシー
まず始めに言っておきたいのは、基本的にウィザーズ社はファンが作り出すコンテンツに対しては非常に寛容であると私は感じています。
ここの話は公式のファンコンテンツ・ポリシー(最終更新日:2017年11月15日)のページを読み解いていく形になります。
この手のページって普段は絶対に読まないのですが、のっけからそこで、私たちの法の魔道士を召喚し、ファンコンテンツ・ポリシーとFAQを作ることにしました。
みたいなユーモアが散りばめられていて普通に面白いので、一度読んで見る事をオススメしますw
さて、まずはウィザーズ社のIP(知的財産)について。
いわゆる著作権とか、法的な問題に問われる可能性がある対象ですね。
で、ウィザーズ社のIPって正確にはなに?
ウィザーズ社のIPは、カード、クリーチャー、書籍、ゲーム、ゲームプレイ、画像、物語、ロゴ、アニメーション、アートワーク、プロット、場所、歴史、キャラクター、グラフィック、ファイル、文章、その他、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社によって発行された素材のことです。
引用 – ファンコンテンツ・ポリシー
※2019/01/30現在、このポリシーはウィザーズ社により予告なく変更される可能性があります。
んー、まぁ雑に全部って思っとけば間違い無いですね。
画像は勿論、名前やらカードテキストやら設定に至るまで全てがIPに該当します。
んで、これをファンコンテンツで使うなら「7つのルール」を守りましょう、守ってくれるなら基本的にうちのIPはフリーで使う事が出来るよ!
ってのを定めているのがファンコンテンツ・ポリシーって訳ですな。
ちなみにこの7つのルールの原則となっている3つの条件は
- フリーでシェアしましょう
- クリーンにしましょう
- 誰かを傷つけてはいけません
このように定められています。
なのでファンコンテンツにウィザーズ社のIPを使うなら、そのコンテンツは最低でも
- 無償でユーザーが利用出来る事
- 個人情報を取得しない事
- データ等の出典元を明らかにする事
- 特定の相手を誹謗中傷しない事
などの条件を満している必要があります。
少し勘違いしそうな部分と言えば、コンテンツに広告を置いたり寄付を募ったりするのは全く問題無いって事と、ユーザーの登録も必要ならば問題ないよって事。
以上の前提を踏まえて、今回私が公開したいと熱望している「一人回しシミュレータ」について、ポリシーを当てはめるとどうなるか。
既に私が公開している「デッキエディタ」と比較しながら見て行きましょう。
条件 | シミュ | エディタ |
---|---|---|
一言で: フリー | 〇 | 〇 |
コミュニティに非公式のものであると伝える | 〇 | 〇 |
他者を傷つけない | 〇 | 〇 |
ウィザーズ社に危害を及ぼさない | ? | 〇 |
有害なものを作成しない | 〇 | 〇 |
安全なスポンサーの実践 | 〇 | 〇 |
その土地の法に従う | 〇 | 〇 |
想定ではなんの問題も無いつもりでしたが、コンテンツの公開直前に「一人回しシミュレータを2台並べて、常に手札が全公開されているのを気にしなければ対戦出来なくは無い」と言う事実に気づく事になります。
そうなるとこれは「ゲーム」に該当してしまうのでは?と言う懸念点が浮かび上がる事になりました。
ウィザーズ社に危害を及ぼさない私たちは、以下に挙げるいかなることも慎んでいただくようにお願いします。
- 他のゲームにウィザーズ社のIPを使用しない。これには、あなた自身のものも、他者のゲームのコンポーネント(たとえば、ルールブック、トークン、フィギュアです)も含まれます。また、無料で配布されるかどうかとは関係ありません。
引用 – ファンコンテンツ・ポリシー
※2019/01/30現在、このポリシーはウィザーズ社により予告なく変更される可能性があります。
むむむ、これはイカンです。
ここで私は下手な発言をして荒れる事を恐れ、公式の見解を得るのが一番だと考えました。
日本の総合サポート窓口について
早速ウィザーズ社にコンタクトを取るべく、
ご質問がある場合、もしくはあなたが作成しようとしているファンコンテンツが本ポリシーに収まらない場合、ウィザーズ・ヘルプ。システムhttp://wizards.custhelp.com/app/homeにログインして連絡を取ってください。可能な限り早く返答いたします。
引用 – ファンコンテンツ・ポリシー
※2019/01/30現在、このポリシーはウィザーズ社により予告なく変更される可能性があります。
このリンク先で公式アカウントにログインして、結構な時間サイト内をさまよいました。
何故さまよったかと言うと…
英語のコンタクトフォームしか見つからない!
え、ちょっと待って。
私の英語力はMTGのenテキストぐらいなら読めます程度なんですけど。
伝えたい事はネクロポーテンスのテキスト数十枚レベルなんですけど。
途方に暮れた私は、日本の総合サポート窓口に連絡する事にしました。
- 公開したいコンテンツの大まかな仕様
- ウィザーズ社のIPにあたる画像が使われている部分
- ゲームに分類されるかどうかのジャッジ
- そしてこれらを詳しく伝えるべき窓口はどこか
こんな感じの内容で。
(それから6日目の夜)
返信…来ないなぁ。
翌日、1週間が経過した時に
私たちからの返答を聞くことができなくとも、それがあなたの、ウィザーズ社のIPを使用したいという要求を私たちが認可したということを意味したものではないということはご理解ください。あなたの質問がファンコンテンツ・ポリシーの範疇なのかもしれません。
引用 – ファンコンテンツ・ポリシー
※2019/01/30現在、このポリシーはウィザーズ社により予告なく変更される可能性があります。
私は「そう言うことか」と思い、公開作業を再開しました。
程よく進めていた時、なんとウィザーズ社から返答が!
あれ、こりゃ続きが有るって事?
私は再び公開作業の手を止め、返答を読み始めました。(※この辺は私のフォロワーさんならバタバタしてたのをご覧になったかも知れませんw)
内容はまず、返答が遅くなって大変申し訳ありませんと一言添えた丁寧な文章で始まりました。
お問い合わせいただいた件につきまして、誠に申し訳ございませんが本窓口では本件のWEBアプリが弊社ファンコンテンツ・ポリシーの範疇かそうでないかの判断はいたしかねます。
やっぱりそうですよね、これは想定内です。
問題は日本語でコンタクトが取れる窓口はどこですか?ってとこなんで。
案内されたリンクを踏んでみた所、おもっきり本社(アメリカ)のサポートサイトが表示されました。
やべえww
URLにはスレッドのチケットIDが付与されていたので、既に担当に内容は転送されているだろうから少しは前進したのかも知れないけど…w
一旦返答メールに戻って続きを読みます。
本件につきまして、恐縮ではございますが言語に関するサポートは行っておりません。
日本語でご記入いただいても問題ございませんが、回答言語の保証はできかねますこと、予めご了承ください。
そ、そうなんだ!
良く分からないけど、恐らく「高性能な翻訳ツール」的なものがあるに違いありません。
そうと分かればやる事は一つ、熱烈濃厚なメールを作成し、可能な限り蛇足を消し込んで、数枚のスクリーンショットも添付して、いざアメリカのデスクへ…
Send mail!!
届け熱きこの想い。
本社のサポート窓口について
本社に問い合わせてから2日後(早いね!)、ウィザーズ本社より返答がありました。
多少変わった言い回しがあるけど、かなり自然な日本語で書かれていたのできっと例の翻訳ツールが良い仕事をしたに違いありません。(※返信者のお名前は普通に英語でした。)
早速目を通すと、いきなり文頭からニヤリとさせられます。
コースト・カスタマー・サービスのウィザードにお問い合わせいただき、ありがとうございます。
我が社の魔法使い(意訳)
って言い回し、良いですねぇ。
少し緊張してたけど、これのおかげで楽に全文を読む事が出来ました。
結果から言うと、
残念ながらお答えする事は出来ません
って事で解決には至りませんでした。
理由は以下の通り
当社のライセンスに関連する質問についての支援、または法的解釈を提供することはできません。
前後の文章から解釈すると、ここで私のプレゼンに対してウィザーズ社が公式に「良いよ」とか「ダメだよ」と言う返答をしてしまうと
- 了承を得られた場合、私がウィザーズ社に「了承貰っている事を売りにする」可能性がある。
- 了承を得られなかった場合、他のコンテンツに対して「何故コレは咎められないのか」などと攻撃し始める可能性がある。
※上記2点は私が推測した可能性の例です、公式の文章ではありません。
つまり、本件に対して可否を出す=半公認に等しい効力を発揮してしまうと言う事です。
冷静に考えると、確かにその通りですよね。
事は単純では無く、公式に可否を出してしまうと「あのコンテンツは良くてなんでウチのはダメなんだ」とか「あのコンテンツがセーフならこれもセーフでしょ」とか、収拾がつかなくなるって話。
そして、アドバイスとして
本件を解釈することが可能な、あなたが選択した弁護士または他の法律専門家と相談することをお勧めします。
って事を勧められました。
この事から、ファンコンテンツに関する質問は
ファンコンテンツ・ポリシーに書かれている事は守ってね、それ以上の支援は出来ないし問題になるかも知れないよ。
これに該当しない内容でないと、基本的には「弁護士に相談してね!」って言う回答しか得られないんだと思います。
なんか当たり前の事を書いているような気がしてきたけど…w
ちなみにメールには
その他にご質問や懸念事項等ございましたら、当社までご連絡ください。喜んで、できる限りのお手伝いをさせていただきます。
と追記されているので、ほんとに答えられない1点を的確に質問しちゃった形になったのかなと。
あ、もひとつ
私たちはそれを目的として個別翻訳サービスを使っております。
翻訳ツールについても言及されてますね、今回は大変お世話になりました。
そして私はどうするのか
色々と頭の中を整理してから、本社のカスタマーサービスに「コースト社の魔法使いさんへ」と、精いっぱいのユーモアをこめた返信の文章を書き始めました。
返信のお礼と内容を理解した旨、今後のMTG界の発展を願っていますと言うメッセージを添えて送信した私は、軽く「弁護士」について調べてみました。
IT・ライセンス・インターネット、あたりのキーワードで調べてみた所、相談するだけで
1~2神ジェイス/1時間
ぐらいの費用がかかり、何か問題が起きた場合は着手料として
Mox Pearl(リバイズドアンリミテッドの状態Ex)
程度の費用がかかるらしい。
…フッ(失神)
うーん、正直なところ正攻法のハードルはとても高いです。
良いか悪いかを考えないなら、ファンコンテンツ・ポリシーの「ルール#5」に則る事で公開する行為自体は可能なんだと思います。
有害なものを作成しない私たちは、あなたの使用の仕方が不適切、攻撃的、損害を及ぼす、軽蔑的であると判断した場合(この判断は私たち独断の裁量によります)に、いかなる時でも、理由の開示の有無にかかわらず、あなたがウィザーズ社のIPを使用するのを停止させる、もしくは制限する権利を有します。このような事態が発生した場合、あなたは速やかにファンコンテンツを取り下げるか、でなければデモゴルゴン(そう、巨悪はその負債から解き放たれている)に相対しなければならなくなるでしょう。
引用 – ファンコンテンツ・ポリシー
※2019/01/30現在、このポリシーはウィザーズ社により予告なく変更される可能性があります。
いわゆる「怒られたら速やかに取り下げる」って状態だね、ウィザーズ社から返答が無かったらこれで行こうと思ってました。
QAの所に「取り下げさせるであろうコンテンツ」として明記されている事にも絶対に該当しないと思ってますしね!
Q: あなた方が取り下げさせるであろう、"不適切、攻撃的、損害を及ぼす、軽蔑的である"ファンコンテンツとはどのようなものですか?
A: ウィザーズ社をみすぼらしく見せかねないもの、私たちのファンを傷つけるもの、何でもです。ウィザーズ・オブ・ザ・コースト行動規範がいくつかの例を概説しています。要するに、あなたのファンコンテンツが私たちのゲームに焦点をあてているものであり、議論を引き起こしかねない話題からは遠ざけるようにしてください。それ(と関連してるもの)をクリーンに保ってください。子供たちもこのゲームを遊ぶのです!そして、人種、性差、同性愛、性転換、身体の障害、年齢、その他などの差別とあらゆる攻撃の内容を決して、コンテンツの中に含めてはいけません
引用 – ファンコンテンツ・ポリシー
※2019/01/30現在、このポリシーはウィザーズ社により予告なく変更される可能性があります。
しかし「ルール#4」のゲームであるかどうかって部分がどうしても心に引っかかってます、いかなることも慎んでいただくようお願いしますとまで書いているしね。
この記事を読んだ皆さんは、この「ゲーム」と言うのはどう言う物を指していると思ったでしょうか?
私は行くも引くも決めきれず、半々と言う情けない心境です。
弁護士に相談して、可能性についての解釈を出してもらうのが最も正解に近いんだろうけどね!
相談だけなら2神ジェイスぐらいだし、カード購入資金とは別にコツコツと貯金かなぁ。
非公式でこう言うシミュレータを公開している先駆者がいらっしゃれば私も乗っかって行きたい所なんですが、なにぶん作る事以外は勉強不足なようです。
以上、ウィザーズ社の知的財産権についてのお勉強でした。
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コメント一覧
ウィザードさん宛に返信したって言ってるからネタではなさそうと思ってコメントします。
Wizards of the Coast Customer Supportを機械翻訳して「コーストカスタマーサポートのウィザード」になっただけだと思います。
Johnさん>
当時はある程度日本語も分かるんじゃないかなと言う印象が強かったんですよ、校正通してるハズのポリシーページもあんな表現なので余計に。
世界展開している企業の本社サポートにマルチリンガルが居てもなんらおかしくない、とかそんな事考えてたのかもw(=それぐらい流暢な日本語長文!)
まぁドキュメンタリー記事なので、冷静になって見れていない部分とか、勘違いとか、起こした行動とか、結果とか、全部ありのまま書いてます。
細かいとこはニヤニヤしながらお楽しみ頂ければとw